ごく静岡ローカルなレコード

 静岡県。東西170km。新幹線の駅が6つあり、東名高速のインターチェンジが15ある。通過するには長い県である。といっても長野県や岩手県にはかなわないが。
 海があれば日本一の山もある。つまりなんでもアリだ!「いかもの趣味」発信者井下の育った地である。
 そんな静岡ならではのレコードを紹介しよう。



ごてんばあさん/藤本房子 RCA RVS-1170 (1979)
いちばん星みつけた/葉村エツコ

 静岡の民放「テレビ静岡」が生み出したいかものである。昭和時代の局のキャンペーンソング。CM時間の1分間もしくは30秒でアニメつきで流れていた。ばあさんは歯をむき出した品のない顔をしている。
 平成の大合併以前には、静岡県には21の市と12の郡があった。このレコードの歌「ごてんばあさん」は、そうした市や郡の名前をすべて盛り込んだ歌詞になっている。地名を羅列してその隙間に無理矢理助詞をつけて一応ストーリー的にしたみたいだが、まるで呪文。
 作詞は伊達歩すなわち伊集院静。歌詞はこちらにあり。なんとも強引であると子供心に思ったものだが、おかげで県内の地名は完全に覚えることができた。
 1番が東部の地名が並んだ「ごてんばあさん」、2番が西部の「はままつばあさん」で、30秒CMではどちらかの詞が流れた。60秒で1番2番通し。

 この歌を知っているかどうかで、生粋の静岡人かどうか判定できる。歌えるということであれば、年まで絞られてしまう。
 それにしても、藤本房子の歌声は、突き抜けたような能天気な明るさで、金沢明子のようだ。気になる存在なので、現在レコード物色中。

 B面は素人子供歌番組「いちばん星みつけた」のテーマソングである。



激練り IKE RECORD N4R-5041
初凧や 遠州灘は 五月晴れ

 浜松の電柱や塀にはよく、「提灯・ワッペンのない方は練りに参加できません」と書かれた掲示札があり、謎な気分にさせられる。これは毎年5月3〜5日に行われる浜松まつりについての注意書きで、要は町内会に所定の金額を払わないと参加できないようにしているのだろう。
 浜松まつりは熱い。昼は凧上げ夜は屋台引き回し。
 まつり期間中はラッパと笛の音、そして「オイショ、オイショ」の掛け声が一面にこだまする。練りの人々が渦になって、路地に次々と押し寄せてくるのを見るはすごいエネルギーを感じさせる。

 このレコードではそんな「激練り」を収録したものである。といっても祭りの実況を生で記録したものではなく、この盤のためにわざわざ録音したものである。スタジオで録ったのだろうか?ジャケット裏データによると、ラッパ組、太鼓組、練り組、本練り仕掛け組など22名の人々が作り出した音のようだ。公民館でも使ったのだろうか。
 A面ではラッパのフレーズ、太鼓と笛のリズム、そして「オイショ、オイショ」の掛け声が入っていて、録音中にだんだんノってきたのか、どんどん早くなってくる。
 一方B面では、掛け声はまったくなく、ラッパ、太鼓、笛が淡々とフレーズを繰り返すだけである。曲そのものは勇壮なのにやけに静かで、まるで手足を縛られているみたいで妙な雰囲気。
 さらに、このジャケット裏面には、「たこの力学」と題して、たこが空中で受ける力を図示しながら解説している。サスガ!



寸又慕情/杉 隼人 MIX RECORDS SKI-8109
B面:川根の女

 大井川上流の本川根町の観光スポットといえば、寸又峡。温泉があり吊り橋があり、ダム湖に映える新緑やら紅葉やらで、シーズン中はにぎわう。
 また、登山や渓流釣りの基地でもある。ずいぶん山奥の地であるが、さらに奥を目指す人々がいるのだ。

 さてこの「寸又慕情」のジャケット。色づき始めた紅葉に囲まれた夢の吊り橋を背景にしているが、この人物はこの場で撮られたものではない。高い位置から見下ろす背景に対し、この人物は水平位置のアングル。光の差し方もおかしい。本当なら足場の悪いその場所で、何を想うか杉隼人。

 詞はマイナーなご当地ソング共通の出来で、叙情的なひとり旅といった設定に、地名や名所を織り込んでいる。地元の猟師や物好きハイカーしか行かないような峠に、想い出の女がいることになっていたりする。スポット的ローカルレコード。

 題字は当時の本川根町長佐藤正美氏によるものである。


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